しつけにおいて最も重要なことはアイコンタクトです。犬と人間が目を合わせることです。犬が常に飼い主を見ることです。
行動制御がしつけではない
市販されているしつけの本などには人間の言葉に対して犬の行動を習慣づける方法がたくさん書かれています。確かに犬は同じことを繰り返すと学習して、多少嫌なことでも我慢して命令された行動をとるようになります。しかし犬は人間の言葉を理解しているわけではありませんから、音に対する条件反応をしているだけです。
気質が大人しい犬ならばこのような条件反応だけでも問題なく過ごせるかもしれません。英語で「シェイク」とか「ステイ」と命じてはおやつをあげて褒めます。場合によっては股の間をくぐらせるような「芸」をさせて賢い犬だと自慢もできます。
でもそんな賢い犬でも、散歩中にリードが離れてしまったら、いくら犬に「カム」だの「来い」だのと命令しても犬は逃げ回って鬼ごっごを楽しみます。家の外に出ると飼い主など目もくれず自分の行きたい方向にグイグイ歩いて行ってしまう犬ではしつけができているとは言えません。
こうすれば犬はこんな行動をとりますとか、犬にこうさせたいときはこのようにしますとか、そんなことばかり教えているトレーニングや練習はしつけではありません。
いくら命じても犬が聞いていなければ意味がありません。よく考えてみてください、人が犬の名前を呼ぶと犬が人を見ます、目が合ってから人が命令をして犬が従います。この順序は変わりません、犬と目が合っていないときは何を言っても無駄です。
沖縄の話
10数年前に、沖縄の那覇に旅行に行きました。日本犬の雑種のような中型の犬が夕方の国際通りを散歩していました。よく見ると飼い主はリードを付けずに10mくらい後ろを歩いています。犬は自由に歩いていましたが、この犬は常に振り返って飼い主を確認しているのです。飼い主も犬をしっかり見ています。だから犬と飼い主の距離は短くなることはあっても長くなることはありません。
もちろんリードを付けないのは条例違反なので推奨できることではありませんが、私はこの犬と飼い主の関係がしっかりと確立されていると感じました。
おそらくこの犬は飼い主が呼べばすぐに戻ってきます。飼い主は言葉を使わなくてもこの犬は飼い主の目をみて理解すると思います。アイコンタクトができる良好な主従関係・信頼関係ができあがっていると思います。
トレーニング方法
アイコンタクトはどうやってトレーニングするのでしょう。アイコンタクトができない犬をどうやってしつけるのでしょう。そんな方法はありません。アイコンタクトとは目を見ただけで意志が伝わることです。単に目を見るだけのことではありません。
余談ですが、バカなしつけ教室でアイコンタクトの方法としておやつを犬に見せて、そのままおやつを自分の目までもってくれば簡単ですと教えていることがあったそうです。こんなレベルのしつけ教室があることは事実です。
犬が飼い主を好きになること
唯一の方法は、飼い主が犬にっとって信頼できる立場の人になることです。簡単に言えば犬がこの人は大好きだと思ってくれることです。犬がこの人に従おうと思うことだと思います。
日常生活がしつけ
犬のダメな行動は叱っても、犬が喜ぶスキンシップは欠かさないなど日常のすべてがしつけです。もし叱るときも人間の子供を叱るのと同じに考えてはいけません。犬に理解できるように叱らなければなりませんし、スキンシップも同様で「良い子良い子」と頭を撫でることでもありません。犬の性格を考えながら飼い主も勉強しなければなりません。
わが家の場合
わが家の犬も気質の強い犬でしたが、最終的に「森田式しつけ法」で救われました。完全ではありませんが良好な主従関係になれたと思います。リードが外れて気付かずにしばらく散歩していたことがあります。犬は私の後ろをいつもと変わらずついて来ました。
近所の農地に犬をつれて行くことがあります。見通しの良い農地です。条例違反ですが、冬には周囲の畑には誰もいないのでノーリードで自由にさせることがあります。犬は喜びますが私からあまり離れません。私が移動すると急いでついて来ます。常にチラチラと私を見ています。
犬を放すのは条例違反ですから悪いことです。しかし犬との付き合い方は私は間違っていないと感じています。
まとめ
室内で大型犬と暮らすにはアイコンタクトができるまで良好な関係を築きましょう。もちろん簡単なことではありません。犬が飼い主を認めてくれて、飼い主の愛情に守られて暮らすことを選択してくれれば築けます。
そのためには日常的にスキンシップをとりながらダメなことはしっかり教えて、良いことは大袈裟に褒めるようなことを繰り返すことも重要です。数カ月でしっかりとアイコンタクトがとれます。
市販のしつけ本には書いていないことを森田式しつけ法では教えてくれます。私は上手に説明できませんが、興味のある方は「森田式しつけ法」を学んでください。