子犬の甘噛みの本当の意味を理解しましょう

子犬の時期

子犬は何でも咬んで情報を得て学びますが、人間に対する甘噛みは意味が違います。子犬を育てるうえで甘噛みの意味をしっかり理解してください。そして正しいしつけに役立ててください。

人に対する子犬の甘噛み

子犬は何でも咬みます。これは成長期の子犬にとっては勉強のひとつでもあり遊びでもあります。子犬が物を咬むことは必要なことです。たくさん咬めるものを与えてください。しかし人間の手を甘噛みする行為は許してはいけないことです。

甘噛みは本能的な行動

子犬は成長するにつれ徐々に本能が目覚めてきます。支配性の本能が目覚めてくると周囲の仲間のなかで一番になろうとします。軽い挑戦をしてみたくなります。たくさんの犬と暮らす環境であれば、弱そうな仲間の犬に甘噛みしてみます。相手が怒らなければエスカレートして体当たりします。そうして最終的にはマウンティングをしようとします。本格的には成犬になってからの行動になりますが、4カ月位の子犬でもその本能は目覚めてきます。

子犬は人間も犬も区別がつきません。鏡を見ても自分とは思いません。子犬は身近な人間にも挑戦しようとします。人間よりも自分が偉くて強いボスだと言いたいのです。俺のほうが「強いんだぞ」「偉いんだぞ」という挑発的な行動の第一歩が甘噛みなのです。

子犬の甘噛みは動物社会では自然なものですが、人間社会にとっては悪い心理です。人間がきちんとした対応をしなければなりません。

甘噛みを許すとどうなるか

甘噛みをそのままにして成長してしまうとどうなるでしょうか。子犬は自分はリーダーだと思い成長します。しつけができなかったり困難になって、穏やかに暮らせる犬ではなくなります。

自分が家族のリーダーだと思っている犬は世間にはたくさんいます。人間を引っ張るように先頭を歩いて散歩している犬はその典型的な例です。飼い主が後ろから呼んでも、犬は振り向きもしないでしょう。

実際には気質の強い犬ばかりではありませんので、なんとなく犬との生活はうまくいっていることもあるでしょう。小型犬なら抱き上げてしまえば手間がかかりません。しかし我儘(わがまま)な大型犬は深刻な問題になります。

人に甘噛みをさせない方法

甘噛みは、言葉で「イケナイ」とか言って叱っても効果はありません。甘噛みをさせないためには、犬が人間に対して挑戦しようという「支配性の悪い心理」を持たせないことです。

悪い心理をなくす

本来なら甘噛みは支配性の本能による自然な行動なのですが、人間と穏やかに暮らすためには悪い心理になります。前述のように甘噛みはリーダー(ボス)になるための本能的な心理からの行動なので。この悪い心理をなくして人に従う心理を育てれば甘噛みはなくなります。自分は飼い主よりも下の順位だ、飼い主は自分のリーダーだと認識させればよいのです。

間違った考え方

リーダーとか順位と書いてしまうと古典的な服従訓練と勘違いされるかもしれませんが、そうではありません。「力尽(ちからずく)」で人間に従わせるような方法もありますが間違った方法です。たとえ従う犬になっても、心を閉ざした病気の犬になってしまいます。人間であれば「笑わない子供」になってしまいます。

似たような考え方でマズルコントロールという方法がありますが、まったく意味がありません。マズルとは口から鼻にかけての部分を言います。このマズルの自由を奪って主従関係を築くという考え方です。卑怯な方法です。卑怯な手段では服従しても信頼関係は築けません。

初めて診察を受けた動物病院でのことですが、獣医師が何も説明もせずに「口輪」をつけて犬の診察をされたことがあります。突然でしたので驚きましたが、二度とその獣医師の病院へは行きません。医学だけ勉強してきた獣医師はダメです。

正しい考え方

犬が人間社会で暮らすなら「敵」から身を守る必要がありません。敵はいません。子犬にこの社会は安全なんだということを教えてあげます。子犬に「家族の愛情に守られていれば安心だよ」ということを教えます。犬は飼い主の愛情に守られていれば安心なんだと理解すると、自分から人間の下の順位についてくれます。勝手に飼い主をリーダーと認めてくれるのです。

どうすれば教えられるのでしょうか。

なにをされても嫌がらない犬

なにをされても嫌がらない犬を育てることが甘噛みをさせない唯一の方法です。

重要なスキンシップ

犬はスキンシップを好みます。子犬のうちからたくさん触ってあげてください。頭をなでてヨシヨシするのでありません。頭も腹も背中も足も、全身を逆毛になるように撫でまくりましょう。子犬を喜ばせるためのスキンシップではありません。犬のストレスを人間が受け止めて、人間は安心なんだと教えるためのスキンシップです。

優しく「ヨーシ、ヨーシ」のように声をかけながら続けてください。子犬が飽きてどこかへ行こうとしても少し強引に続けます。この行為は子犬のストレスを人間が受け止める(吸収する)ものと思ってください。しかしスキンシップだけでは悪い心理はなくなりません。

ストレスを受け止める

犬は苦痛や恐怖のようなストレスを感じると逃げようとします。逃げられないと悲鳴をあげたりします。肉体的な危険だけでなく、精神的に不利になったときもストレスです。

母犬が子犬を叱るとき、子犬の首をガブっと噛んだりします。首を噛んで子犬を持ち上げたりもします。これで子犬は自分が悪いことをしたと理解するようです。犬の首は丈夫なのでいろんな意味で利用されるようです。

人間が子犬の首をつまんで持ち上げても、子犬は首が痛いとは感じないようです。でもしばらく持ち上げていると子犬は悲鳴をあげます。この悲鳴は「痛い」悲鳴ではありません。自分が不利な状態になっているという危険を感じたことによる悲鳴です。

子犬は悲鳴をあげながら不利な状態から逃げようとしますが、ここで逃がさずに逆に子犬と向き合って「ヨーシ、ヨーシ」と逆毛で撫でます。片手は首根っこをつかんで片手で撫でます。「大丈夫だよ、安心だよ」と教えるように撫で続けます。子犬の性格にもよりますが、気質の弱い子犬なら30分くらい、気質の強い子犬なら5分くらい続けます。

これは一例ですが、子犬に適度なストレスをかけて、そのストレスをスキンシップで人間が受け止めるようなことを続ければ子犬は徐々にストレスを感じなくなり、人間の愛情に従っていれば安心なんだと思うようになります。

めったにないことですが、間違って子犬を踏んでしまったり、子犬に何か重量物を落としてしまったりすると子犬はキャインと悲鳴をあげて逃げます。こんなときにも子犬を逃がさずに「ヨーシ、ヨーシ」と逆毛で撫で続けます。子犬は危険を感じて(ストレスを感じて)安全な場所に逃げようとしますが、逃がさずに人間がスキンシップで子犬のストレスを受け止めてやります。

こんなことを続けていると人間の愛情を信じて、人間をリーダーとして信頼するようになります。早ければ5カ月位でも甘噛みはしなくなります。そしていずれ何をされても嫌がらない犬になります。

ただし、ストレスのかけかたやスキンシップによる受け止めももっと詳細に理解しなければならないことがあります。ここでは説明しきれません。実際には30分位の説明が必要です。

絶対に形だけを真似しないでください。

まとめ

この受け止めによる子犬との信頼関係を築く方法は「森田式」によるものです。わが家の犬も支配性の強い犬でした。私は最初に古典的な間違ったしつけ法を学んでしまって苦労していました。犬が1歳になる頃に遅ればせながら森田式のしつけ法を知り、なんとか森田式の理論を理解したつもりです。ある程度良好な信頼関係が築けました。

その後は甘噛みはもちろん、教えてもいないのに、飛びつきなどしません。食卓へ飛びあがりもしませんし、ソファーにも乗りません。私のベッドにも乗りません。インターフォンが鳴っても吠えません。

最後に念を押しますが、ここに書いてあることをそのまま実行しないでください。このサイト内でも別途ページを設けますが、興味のある方は森田誠さんのサイトのリンクを下に書いておきますのでご覧ください。

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